こんにちは。調剤薬局に勤務している薬剤師のりかです。
処方箋どおりに薬を渡すだけだろう!なんでこんなに待たせるんだ!!
病院で何時間も待たされて、やっと終わったと思ったら薬局でもまた待たされる・・・。
「なぜお薬を渡すだけなのに時間がかかるのか。」という疑問を抱いている方も多いと思います。
実際に薬局での勤務中に受けるクレームで最も多いのが「待ち時間に関すること」です。
もちろんできる限りお待たせすることのないよう業務に励んでいますが、待ち時間は安全な薬物治療を提供するために必要な時間です。
この記事では、患者さんからは見えにくい薬局の業務についてお伝えしたいと思います。
- お薬のお渡しに時間がかかる理由
- 処方箋受付~お薬お渡しまでのあいだに薬剤師がしていること
処方箋受付~お薬のお渡しまで薬剤師は何をしている?
①処方箋の内容確認
「医師が出したお薬をそのまま渡すだけでしょ?」と思っている方も多いと思いますが、処方箋を受け付けた際に薬剤師はその内容が適切かどうか確認しています。
もちろん医師は慎重にお薬を選んで処方していると思いますが、ほかの病院でもらっている薬を把握していなかったり、単純に記載ミスをしているというケースもあります。
薬剤師は処方箋に疑わしい点がある場合は医師に確認するよう義務づけられており、この確認をきちんと行うことで、より安全な薬物治療を提供することができます。
②処方内容の入力
処方箋の内容が適切であると確認できたら、処方箋の内容をパソコンに入力します。
パソコンに入力した内容に基づいて、お薬の説明書を作成したり、お会計を計算したりします。
お金にかかわる部分でもあるため、薬局側は間違いのないように注意深く行っています。
入力は調剤事務さんにお願いしている薬局も多いですが、入力内容が合っているかどうかは薬剤師が確認しています。
③お薬の準備
規模にもよりますが、薬局には数百~数千種類のお薬の在庫があります。
そこから処方箋に記載してあるお薬を取り揃えるのですが、慣れるまでは結構大変な作業です。
また、お薬の内容によっても準備に時間がかかることがあります。
- 一包化(お薬の飲み忘れ・飲み間違いを防ぐために1回分ずつお薬をまとめること)
- 薬を半分に割る
- 軟膏の混合
- 粉やシロップ
などは準備に時間がかかってしまう傾向があります。
一包化の方が続いたり、兄弟でまとめて粉やシロップが出たりすると薬局はバタバタしてしまいます。
④最終チェック
ここまででやっとお薬の準備が整います。
最後にもう一度不適切な点がないかどうか確認します。
特に準備したお薬の種類、量、お薬の説明書に記載されている飲み方等に間違いがないかどうかは患者さんの健康に直結する部分なので、決してミスは許されません。
お薬は似たような名前のものも多く、また1錠に含まれる成分の量などにも違いがあるため慎重にチェックする必要があります。
複数の薬剤師が勤務している薬局では、お薬を準備した薬剤師とは別の薬剤師が最終チェックを行うようにしていることが多いです。
2人の薬剤師の目を通すことで、ミスが起こらないように気を付けています。
⑤お薬をお渡し
処方されているお薬の説明や服用状況の確認、前回お薬を服用後気になる点はなかったか、などを確認しながらお薬をお渡しします。
このときに処方意図と違うものが出ていたり、副作用の可能性が疑われたりする場合はもう一度処方医に確認をとり、場合によっては処方が変更になることもあります。
⑥記録を残す
薬局では、患者さんの体調変化やお薬の服用状況などさまざまなことを記録に残しています。
こうすることで次回別の薬剤師が担当する場合や電話での問い合わせなどにもスムーズに対応できます。
患者さんからは見えにくいけど、お薬をお渡しするまでにさまざまなことをやっています。スムーズにいけば5~10分程度で準備できますが、内容によってもっと時間がかかるケースもあります。
通常よりもお薬のお渡しに時間がかかるケース5つ
①初めての薬局でお薬をもらう
初めて来局された際には、氏名や生年月日、保険証の番号など患者さんの情報を登録するのに時間がかかることがあります。
また、これまでのお薬の服用歴やほかの病院でもらっているお薬の内容の確認などもいちから行うため、2回目以降の来局に比べると時間がかかってしまいます。
病院の近くの薬局で薬をもらわなければいけないということはないので、自宅や勤務先の近くなど、通いやすい薬局をかかりつけ薬局にすることで、薬剤師は基本的な情報を把握したうえでお薬を準備できるため、お薬をスムーズにお渡しできます。
②お薬の在庫がない
薬局にはすべてのお薬があると思っている患者さんもいらっしゃいますが、日本で使われている医療用医薬品は約2万品目ほど。
すべてのお薬を在庫しておくことは現実的には難しいため、薬局では近隣の病院でよく処方されるお薬や定期的に来局する患者さんが使っているお薬などを主に在庫しています。
そのため、新規で遠方の病院からの処方せんが持ち込まれるとお薬の在庫がない場合もあります。
在庫がない場合は、近隣の店舗で在庫しているところがないか探したり、卸から取り寄せたりして、なんとか準備できるよう手を尽くしますが、時間はかかってしまいます。
③処方医に確認しなければならないことがある
- 他の病院で同じようなお薬をもらっている
- 他の病院のお薬と飲み合わせが悪いお薬が処方されている
- 過去に副作用が出たことのあるものが処方されている
- 診察時のお話と処方せんの内容が異なる
などの理由で薬局から処方医に処方せんの内容について確認をすることがあります(疑義照会)。
すぐに処方医と連絡がとれればいいのですが、診察中などで電話がつながらない場合もあります。
また、大学病院などの規模の大きい病院では、処方内容に関する問い合わせはFAXでやり取りをすると決められている場合もあります。
薬剤師は処方箋に疑わしい点がある場合には、処方医に確認しなければならない義務があり、確認がとれるまでお薬をお渡しすることはできません。
処方箋の内容について確認をとる必要が生じた場合は、待ち時間が長くなってしまう傾向があります。
④調剤に時間がかかっている
お薬の種類が多い場合や、一包化(1回分ずつお薬をまとめること)や粉砕(嚥下困難な方のために錠剤を粉状にすること)、軟膏の混合、小児用の粉薬やシロップなどは通常よりも準備に時間がかかってしまいます。
効率よく準備するための機械を導入している薬局が多いですが、特に混雑しているときなどは機械の順番待ちになり、お待たせしてしまうことも多いです。
お薬が少ない患者さんの方が早く準備ができるため、自分よりあとに来た人が先にお薬をもらっているという場合は、このような理由があると考えられます。
いつも自分の薬の準備に時間がかかるという場合は、一旦帰宅して、準備ができたころにお薬をもらいに来るということも可能なので、薬局で相談してみましょう。
⑤薬局が混雑している
わたしは今まで5つの店舗で勤務してきましたが、どの店舗も1日中患者さんであふれかえっているということは少なく、1日の中でも患者さんが多い時間帯と少ない時間帯がありました。
午前中は高齢者、夕方は仕事帰りの方や子どもが多く、混雑している傾向があります。
一方、近隣の病院のお昼休みにあたる時間帯は、患者さんが少ない印象です(お昼の時間帯は薬剤師も昼休みを交代でとっていますが、基本的には昼休みでも処方箋は受け付けています)。
可能であれば薬局が空いている時間帯に処方せんを持っていくのもおすすめです。
処方箋を出す際に、混雑しているなと思ったらあとからお薬を取りに来るということも可能です。かかりつけの薬局で相談してみてくださいね。
待ち時間は安全な薬物治療に必要な時間
この記事では、患者さんから見えにくい薬局の業務と通常よりも待ち時間がかかってしまうケースについてお伝えしました。
病院での待ち時間のあとに薬局でも待たされるとイライラしてしまう気持ちもわかりますが、薬剤師は患者さんに安全な薬物治療を提供するために見えないところでいろいろな業務をしています。
処方箋を出して、あとからお薬を取りに来るといったことも可能なので、自分が使いやすい薬局をかかりつけ薬局として利用する方法もあります。
待ち時間は安全な薬物治療のために必要な時間だということを理解していただけると幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。